オフィス・ラブ #∞【SS集】
「おい、久しぶり」
通りかかったカー用品店の駐車場の前で、店員に突然声をかけられ、立ちどまる。
制服姿なので、一瞬、誰だかわからなかった。
貴志と私を引きあわせた、あの友人だ。
貴志と一緒にガソリンスタンドでバイトし、その後この会社に就職した、根っからの車好きだ。
「ここの店舗で働いてたの」
「4月からな、仕事中?」
「そう、ハードメーカーに愛想ふりまいてきたとこ」
得意そう、と彼がお腹を抱えて笑う。
溶けそうな酷暑の日差しの下、オレンジ色のシャツが目に痛い。
「昼飯、つきあわない? 俺、まだでさ」
了承すると、彼は一度店内に入り、薄手のパーカーをはおって戻ってきた。
「お前、貴志と別れてたんだなあ」
「いつの話よ」
あまりに昔の話なので、サンドイッチを吹き出しそうになる。
「いや、俺もなんだかんだ、あいつとしばらく会ってなくてさ」
この間、思い立って、久しぶりに連絡とったんだよ、と言う。
「そしたら、たまたま近くにいるっていうから、店に来いって言ったわけ」
「どうだった?」
「元気そうだったよ。女の子連れてた」