オフィス・ラブ #∞【SS集】
ちくりと胸が痛んだけれど、それを無視できるくらいには、私も幸せを手に入れている。



「どんな子?」

「若い子。会社の子って言ってた。可愛いの、新庄さん、とか呼んじゃって。なんかちょっと、崇拝してる感じで」

「貴志を?」



ふたりで笑った。

この友人は私と同い年なので、貴志にとっては、友人兼、バイトの先輩だ。

お互い名前で呼び捨てする関係だけど、やっぱり私たちの中にいると、貴志は最年少で。

その貴志が、下から慕われているところなんて、想像できない。


いや、そうでもないか。


彼の中の兄貴の部分は、組織の中にいると案外、いい上役として発揮されるのかもしれない。



「お前は、どうしてんの」

「この間、結婚したよ」



あれっ、本当だ、と私の左手を見て、おめでとう、と笑う。

その、のんきな鈍さに、つい笑った。



「貴志と結婚すると思ってたよ」

「まあねえ」



食前に頼んだアイスティが、早くもなくなりかけていた。

もう一杯頼もうか迷いながら、ストローでじゃらじゃらと氷をかきまわす。

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