オフィス・ラブ #∞【SS集】
「大塚が下を相手にしてるのって、新鮮だな」
「これでも、お姉ちゃんですから」
照れたみたいに、お姉ちゃんが言う。
なんだか、少し子供っぽく見えるのは、気のせいだろうか。
新庄さんが大人だから、そう感じるんだろうか。
なんで「大塚」なんて、他人行儀な呼び方をしてるんだろう。
あたしがいるから、気をつかってるんだとしたら、そんなの、いいのに。
そう思ってふたりに言うと、なんでかふたりとも、声を合わせて笑った。
「新庄さんの妹さんがね、えりさんていうの。紛らわしいでしょ」
だから、とお姉ちゃんが説明する。
紛らわしくたって、別にいいじゃん。
ここにその「えりさん」がいるわけでもないんだし。
彼氏には、名前で呼んでもらうのが、いいんじゃん。
「恵利って、呼びたくならないの?」
新庄さんにそう訊くと、一瞬言葉に詰まったような顔をして。
その後、ちらっとお姉ちゃんを見て。
「ちょっと、時間がほしいんだよ」
そう、困ったようにほほえんだ。