オフィス・ラブ #∞【SS集】
「そりゃ、気持ちが入った時点でNGだろ」
「だから、その気持ちの有無をどこで判断するか、の話だろ」
「ていうか堤さん、新郎がこんなとこにいていいんですか…」
研修時代にお世話になった堤チーフと、大塚さんと仲のよい雑誌局の石本さんとに、なぜか不思議な縁ができてしまった俺は。
こうしてふたりの披露宴二次会に呼んでもらい、豪華だけど趣味のいいパーティを楽しんでいた。
久しぶりに会えた新庄さんと、隅のテーブルで関連会社の話に花を咲かせ、いいなあ俺もいつかマーケに行って、その会社で修行したいなあと思っているところに、やあ、と爽やかに新郎がやって来た。
元からひな壇に収まっているつもりはなかったらしく、そもそも新郎新婦の席すらないフラットな立食パーティで、GⅠのファンファーレをBGMに新婦がゲームを盛りあげている間、この人はさっさとくつろぐことにしたらしい。
「失礼しちゃうよね」
壁際にいくつかある対面のソファ席で、新庄さんを奥に詰めさせながら言う。
披露宴ではタキシードだったらしいけど、もう普通のスーツに着替えて、スマートなベスト姿だ。
よほど一服したかったらしく、腰を下ろすなりテーブルにあった新庄さんの煙草をかすめ取った。
「日頃の行いだろ」
「お前と一緒にしないでくれる」
俺が差し出した火に煙草をかざしながら、嫌そうに隣を見る。
さっきの、ゲームの正解者からの、ふたりへのメッセージのことだ。