嘘と本音と建前と。
ただ作業を早い段階で始めれば空知と司、二人だけでやらされるのが目に見えていた。


下書きを司の背よりも高い、しかも布に鉛筆でかき、汚れたら落ちるリスクが低いペンキを使う作業をたったの二人でやらされるなんてごめんだ。


ありえない。


ああいう作業は一気に大人数でやるに限る。


司の周りのことは基本、司の手の平で回っている。


「そう...だな。田中に手の空いている人を何人か回してもらおうか。僕が行ってくるよ。」


司が行くと言ったから空知は安堵の表情になった。


空気の読めない空知でもあの場に行けるほど鈍感ではないようだ。


司が廊下に出ると不良たちがぐったりとしていた。


図書室に行っていた30分もの間全員みっちりと働かされたのだろう。


いい気味だと司は思った。


「田中さん。早速横断幕をしたいんだけど人を何人かお願いできるかな。」


仕事の早い人を好む田中のことだ悪い顔はしないはずだ。


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