嘘と本音と建前と。
ブレザーの裾を見るため斜め下を向く香織の瞳は

真っ直ぐ見ている時とは違い長い睫毛(まつげ)が

際立って見えた。


その睫毛も耳にかけてあった髪の少しの束が落ちてきたことによって

片目は隠れてしまい香織が動く度(たび)見え隠れする。


「いや、読んでないかな。」


黒髪の隙間の片目と目が合った。


そしてその目は細くなってまた元の動作に戻ってしまった。


「なら三部作もなかなかなので一応オススメしておきます。」


香織は背筋を伸ばし髪を耳にかけた。


「明日はここにいますか。」


「いる。」


司は咄嗟(とっさ)に何も考えず答えてしまった。


「じゃあ待ってます。明日藤堂先輩のオススメを教えて下さい。

あ、ライトノベルは読まない主義なのでそのへんはすいません。」


香織は策士だから申し訳なさそうな演技をしているのか本当に

申し訳なさそうなのか司は判断できないでいた。


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