嘘と本音と建前と。
今までさんざん嫌というほど空知と香織を見てきたはずなのに

何もわかっていなかった。


「僕も読まないから大丈夫。」


視線から香織を外し小声で頷いた。


「では私はこれで。」


弾んだ声色を司にかけて香織は後ろを向いた。


香織は後ろ姿も綺麗だ。


黒い髪が歩く事にふわっと弾んでいる。


「先輩、バイバイ。」


司の方をいきなり振り返り香織は手を振った。


驚いた司は慌てて手を振り返す。


香織は完全なる策士だと確信した。


それなのにどこか憎めないところがある。


しかしそれがなぜだかわからない。
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