嘘と本音と建前と。
香織の素を引きだそうとするあまり司自身の素まで

引きずりだしてしまった。


「そうだ。先輩、昨日誰かと帰ってましたか?」


やはり昨日窓から見下ろしていたのは香織だった。


空知を前にすると冷静に香織を見ることができるのに

ふたりで話しているとそうもいかなくなる。


「まあ友達と。気付いてたら手でも振ってくれたらよかったのに。」


冷静を取り戻した司は心にも無いことを饒舌(じょうぜつ)に言う。


「そんなの、できるわけないですよ。」


間が空いてから香織は微笑んだ。


「昨日一緒に帰ってた人のこと気になる?」


試す口ぶりで香織の表情を伺がった。


「その聞き方気にならないって言ったらどうするんですか。」


香織は急に冷めたような口調になった。


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