嘘と本音と建前と。
香織の本性を誘き出すことに成功した。


しかしこの調子で自分の本性を隠したままでは近付けなくリードされて

しまっている。


司は諦めて覚悟を決めた。


「乗ってくるのはわかってる。勝たない勝負はしないんだ。」


あくまでも優しく微笑むとそれと同じように香織も微笑み返した。


「昨日のお友達さんは誰ですか?」


冷静に響く香織の落ち着いた声色を用意されたセリフで聞くと

高陽している自分がいた。


「俺の親友。」


司が恥ずかしげもなく答えると香織は真顔に戻った。


「なるほど、そういうことですか。」


言葉を交わしたわけではないが確かに伝わった。


「うちがそんなにあくどい女に見えましたか?侵害やわ。」


香織が腕組みをしてクスクスと笑った。


「間違えてないだろう?人を見る目は自信があるんだ。」


蔑むような目で香織を見ても笑顔を絶やそうとしない。


「まあそれはそうかも知れませんね。」


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