嘘と本音と建前と。
司の表情は大事な人を思い浮かべる顔ではなかった。


「女の子ですか。」


香織は机の下で自分の手同士を繋いでは離した。


「俺、ホモじゃないよ?」


司が苦笑した。


わかりきっていた答えのはずなのに心が重たくなる。


似ているからというだけなのにと香織は呪縛してくる人を思い返した。


端正な顔立ちも声の響き方も頭の良さも似ている。


司は彼を思い出すには充分な人材だった。


「染谷さんは幼なじみいないの?」


その言葉に目を見開いてしまった。


曖昧な笑顔を作ってから前を向いた。


「いるようないないような。微妙な年齢のときに引っ越して来ましたから。」


彼とは幼なじみと呼んでいいだけの間柄に

なれていたのだろうかわからない。


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