嘘と本音と建前と。
友情とは違う何かが香織と彼には存在していた。


「染谷さん、本好きだよね。」


司は香織に気を使ってか話題をそらしてくれていた。


「それを言う(ゆう)たら先輩もですよね?」


図書室にいながらなんて不毛な会話のだろうか。


「まあそうだね。」


司がけたけたと笑った。


司の楽しそうな笑いは嘘偽りのないものだと思う。


香織もその笑顔につられて微笑んでいた。


司は笑うのをやめたかと思えば、今度は優しく微笑んだ。


香織はあたりをキョロキョロと見てから曖昧な笑顔で返してしまった。


「そろそろ帰ろうか。」


司は立ち上がりブレザーを着用した。


香織もそれにつられるようにブレザーに腕を通した。


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