嘘と本音と建前と。
しかし理由がまだ甘いため誰にも言えないでいる。


「一応、は。」


司はそれ以上詮索して来なかった。


香織が自ら進んで大学名を言わなかったからだろう。


その後、香織と司は話すことなく本を読み始めた。


気まずいから話さないでも話題がないから話さないでもなく

ただなんとなく自然に本を読み始めた。


本は集中して読んでいると時間が経つのが早い。


「あのさ」


司の言葉に重なって香織が降りる駅名をアナウンスが告げた。


香織は立たずに司を見ると意外と近い場所に顔があったため

慌てて立ってしまった。


「明日の放課後暇?」


司が香織を見上げた。


明日も用事は特になかったはずだ。


「はい。」


それを聞いて司はホッとしたような笑顔になり「じゃあ明日図書室で。」

と言った。


ドアが閉まる合図が鳴った。


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