嘘と本音と建前と。

『廉』



空知はあの後輩女子を思い出していた。


可愛いとか美人だとか外面に惹かれたのではないと思う。


顔は可愛かったが派手な可愛さでなく、素朴な感じだ。


一瞬見ただけでそこまで冷静に人は人を判断出来ないと空知は思っている。


何故か空知の胸に刺さったのだ。


一方的に引き寄せられたと行ってもいい。


空知の意識を置いて、心だけが一気に引っ張られた。


性格も声もましては名前すら知らない人に心奪われてしまったのだった。


空知が考えている間も、色まで付いた実物サイズから十分の一の下絵を見ながら不良と司、田中が鉛筆で二メートルの布に模写していく。


空知は布をそれを俯瞰(ふかん)から見る。


そうでないと全体のバランスがとれないからだ。


廊下でせっせと田中と不良と司が作業しているのに申し訳ない気持ちにはなるが空知は彼女のことを考えずにはいられない。


「何処のクラスだろ...」


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