嘘と本音と建前と。
本を左側にずらして置いた。


「空知さん来はるんですね。どうすればいいですか?」


司は香織の正面に躊躇なく座った。


「どうって別にふつーにしてくれればいいよ。

気を持たせないで欲しいだけだし。」


司は本棚の上の方の段を見ている。


「そうですか。」


司の表情を見てそうとしか言えなかった。


司にとって空知がいかに大切かを感じたような気がする。


「先輩は好きな人いないんですか?」


しばらくの沈黙を香織が先に破った。


司は目を見開いてから優しく微笑んだ。


「いない。というより作らないって約束したんだ。」


誰に、なんで聞きたい質問はあるのに気管を言葉が通らない。


香織は半開きにした口を固く噤んだ。


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