嘘と本音と建前と。
クセなのかと見ると左側だけ黒いアメピンでクロスにとめられていた。


「なんでピンでとめてるんですか。」


男子でアメピンを使用しているのは極めて珍しい。


「これはね、妹に似合うからって。」


空知はアメピンに触れ、嬉しそうに笑った。


空知が妹を大事にしていることが滲み出ていた。


香織は自分の髪を指で梳(す)いた。


香織は自分の妹と空知の妹を重ねてしまった。


「いいですね、そういうの。」


空知の表情を見ていると香織は自分がさも優しくなったかのような

気になってしまった。


司が空知を大事に思っているのはこういうところがあるからなのだろうか。


「染谷さん。」


司の声に反応すると複雑そうな顔をしていた。


「とりあえず座りましょうか。」
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