嘘と本音と建前と。
「ん?最近だよ。」


司がごく自然に答えた。


「委員会でお世話になったんですよ。私、計算遅いから。」


それに続いてフォローを入れる。


真実味が増した嘘を空知は疑うことなく飲み込んだ。


「藤堂ってびっくりするぐらい仕事速いよね。」


空知はうんうんと頷きながら信じている。


「私より遅く来たのにてきぱき済ませちゃうんですよ。

ホント憧れちゃいますよ、司先輩。」


ぶりっ子をする自分は嫌悪する程嫌いだが司との約束を破るつもりは無い。


香織は自分に司を好きだと暗示をかけた。


鈍そうな空知には徐々に気づかせればいい。


司は面倒くさそうな顔をしてため息をついた。


「染谷さんは計算ドリルしないとね。」


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