嘘と本音と建前と。
空知が緊張を持ちながら問いかけた。


空知の急な緊張が香織にも移ってしまいそうだ。


冷静さを持っていかれないよう拳にグッと力を込めた。


「はい。あ、でも途中から電車なんです。」


空知と司の向こうにいる図書委員と目があった。


微笑みながら会釈すると会釈し返された。


香織の会釈を見た司と空知が振り返り納得したような顔をし向き直った。


「じゃあ帰ろうか。」


司が先に歩き出した。


小走りで空知を追い抜かし、司の隣をとった。


「あんなんでよかったん?」


ぼそぼそと聞き取りにくい声で香織は話しかける。


「大丈夫だ。長期戦になるけど。」


司が香織の顔を見ながら低い声で言った。


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