嘘と本音と建前と。
肩がぶつからない程度の隙間が開いている。


「こういうタイミングだけはいいんだよね。」


司が窓前の手すりを掴んだ。


香織にはどういう気持ちで声に出したのかわからなかった。


ただ少しだけ哀れみが混入していると思う。


下がった眉と浅く刻まれた眉間のしわが司の顔に不似合いだ。


「俺の事、司先輩って普段から呼んでよ。」


「はい?」


紛れも無く司から香織に向けられたら一言を理解出来ないでいる。


「染谷さん結構ドジだから普段から慣れとけば?」


度肝を抜かれた香織は反論をしようと考えるがその前に司の前で

ドジを踏んだ記憶がなかった。


口をぱくぱくさせながら羞恥に耐える香織に司が吹き出した。


「同じ階なんだから見かけるだろ、フツー。」


ドジを踏む度こんな風に笑われていたのかと思うとさらに

恥ずかしさが増す。


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