嘘と本音と建前と。
木のタイルと椅子の足が摩擦し、大きな音が出た。


司は一瞬眉をひそめる。


そして何事も無かったかのように席についた。


左側から差す白熱灯の嫌味な光でさえ、司を際立たせていた。


司にはかえって小細工のない味気ない色の方が良いのかもしれない。


「雨の日って何もやる気しないよね。」


司が伸びをしている。


「雨、降ってへんくないですか?」


外周している人がいるくらいだ。


まだ降っていない。


「午後から雨だしそのうち降るからいいの。」


司は頬杖をついて本棚を見ている。


「かっぱ持ってきた?」


突然聞かれた香織は硬直してからスクールバックの中を漁った。


< 154 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop