嘘と本音と建前と。
「あ、忘れてもうてる。」


司に言われるまで今日の天気予報は曇りだと思っていた。


しかし晴れの日でも雨合羽(あまがっぱ)は携帯するようにしていた。


よりによって今日忘れてしまったようだ。


司が突然立ち上がり、帰り支度を始めた。


それをただぼーっと香織は眺める。


「何ぼーっとしてんの。」


リュックを背負った司に聞かれるまでただ眺めていた。


「早く帰らないと雨降るぞ。」


目が覚めたように香織は慌てて帰り支度を始めた。


そういえばまだ空知は走っているのだろうかとよく耳をすませると

もう運動部は外周していないようだった。


一応窓の外を見ると検問のように生徒指導の先生が服装について

一部の生徒を注意しているだけだった。


その先生達も片手に傘を持っている。


香織と司は靴に履き替え、自転車に跨りその横を通ったが注意されず

そのままいつもふたりで帰る時のルートを辿(たど)った。
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