嘘と本音と建前と。
「すげぇ。ほんとにあったんだ。」


司書が手に持ったファイルをまじまじと見る。


「嘘ついてると思ってたのかよ」と司の背中から声が聞こえたような気がした。


「うん、そうね。染谷香織さんは七組よ。今日は全学年六限までだからもう帰っちゃったかしらね。」


司書はファイルを閉じ二、三年のファイルが立てかけてある貸出返却用のノートパソコンの所に同じように置いた。


「そうですよね。明日クラスにあたってみます。ありがとうございました。」


司がお礼と会釈を済ませ、先に歩き出してしまった。


空知は慌てて司書に軽く会釈をし司の後を追った。


図書室側の階段の踊り場のところで空知は司に小さい声で話しかけた。


「いつの間にハンカチなんて拾ってたんだよ。」


すると返事の前に司が口元を押さえることもせず笑い出した。


「あれだけ一緒に居たのに空知が拾ってる場面見てないなんてありえないだろ。」


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