嘘と本音と建前と。
壁にもたれかけ腹に手を当てながらクククと司は笑い続ける。


「どういうこと?」


「ハンカチなんて拾ってないって言わなきゃわかんない?」


司は前かがみの体勢になって三段ほど上にいる空知に顔だけ上げて言った。


「拾ってない。」


オウム返しをすることしか空知はできないでいた。


真剣にハンカチを返そうと思っている人の表情を作り、司書に平気で嘘をついたのかと空知は思ったが口には出さない。


嘘をつかせた原因は自分にあること位、空知だって理解できる。


「それで」


階段をゆっくり降りながら司が話し始める。


「缶コーヒー、よろしく。」


俳優のように司はわざとらしく振り向いて悪戯っぽく微笑んだ。


「わかってるっつーの」


空知は苦笑した。
< 21 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop