嘘と本音と建前と。
自分が買おうとしていた缶コーヒーだったことに司は驚いた。


「誰も聞いてねーよ。」


大きい声な先輩が声より大きい声というより音で笑った。


もう会うことはないだろうが、司はこの先輩のことを

ビックサウンド先輩と呼ぶことに決めた。


俺は聞いてたよと缶コーヒー先輩に司は心の中で言った。


あの缶コーヒーは校内で販売されてそんなに日が経っていない。


さっき言ってた女生徒はたまたま買ったのだろうか、と少し気になる。


素人目にも美味さがわかる缶コーヒーなら飲む日が楽しみだ。


司は空知のことを忘れ、缶コーヒーのことを考えた。


校内に差し込む茜色の光が強くなって司の顔を照らした。


思わず手で目を庇った。


まだ夏が残る気候で蒸しっと暑い。


それなのに日が落ちるのは真夏と違い早くなった気がする。


司はガラス越しに空知がいることを思い出した。


左サイドだけバツ印に留めたピン留めが気になるらしい。


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