嘘と本音と建前と。
司の質問に空知は首を捻った。


時効はもう完全下校の時間に近かった。


「んにゃ、いいや。あ、でも」


空知が何を言おうとしているのか手に取るようにわかった。


「七組の前は通りたい、だろ。」


空知は驚いて司の目をまじまじと見てくる。


司が凄いわけではない。


空知がわかり易過ぎるだけなのだ。


「空知、わかり易すぎ」


二、三歩後ろ歩きをしてから前に向き直った。


「おいそれどーいう意味だよ」


大きめな声で空知は聞くが司は返事をせず、声を殺して笑った。


空知が素直な存在だから司は複雑な思いをせずにそばに居られる。


本性を隠し切っているわけでなく、これが空知の前での司の素なのだ。


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