嘘と本音と建前と。
素直な空知はどれが自分かなんて考えていないのだろう。


持っている手札の内、この人にはこのカードと決める事なんてするやつに空知にだけはならないで欲しい。


人を簡単に豹変させる感情は「恋愛と憎悪」だと司は思っている。


燃えるような愛だとか恋だとかしらけていると思う司だが空知が経験する恋愛の道はそうあって欲しい。


「ちょ、まってよカオリ」


校門のあたりから染谷香織と同じ名前が聞こえた。


校門に一番近いとはいえ校内にいる司だが騒音嫌いなせいか、普通の人より耳がいい。


「え、藤堂！？」


空知に何も伝えずに、司は慌てて来校者玄関まで走った。


自動ドアが開く前にさっきの声の主らしき人を発見した。


西日でよく見えないが赤色の自転車に股がる女生徒を白い自転車の女生徒が追いかけている。


自転車のドロヨケと呼ばれる部分に貼られたシールを司は凝視した。


司の学校は学校と学年クラス番号が明確にわかるように自転車通学の人は貼ることが必須なのである。


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