嘘と本音と建前と。
だが空知に説明するのは面倒臭い。


「廊下にいた人たちに真面目に働いて貰うためにわざと煽っただけだ。」


建前の建前の本音。


廊下の奴らが仕事もせずうるさいから司は教室に居たくなかった。


廊下にいた奴らのせいで自分の仕事が増えるなんてもっての外だ。


そんなことをうっかりでも空知に言えば変に真面目なところがあるから怒り出すに決まっている。


司の建前に空知は納得しなるほど、流石だなと感嘆を漏らす。


馬鹿が付くほど素直な空知は、司にとってその場凌ぎの友達でなく唯一無二の存在だった。


裏の顔が入り込んだ司にとって空知はある意味憧れと言っていいほど表の顔しかない。


「じゃあ、そろそろ教室に帰ろうぜ。田中頑張ってるみたいだし。」


前言撤回をしよう。


尊敬はしているが憧れてはいない。


今帰ると廊下で髪が蛇に変幻した田中が待ち構えている。


< 5 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop