嘘と本音と建前と。
電話越しに間抜けな声が聞こえる。


「今、教室に来たら女優に会えるよ。」


オープンに名前が言えないため伏せた。


「ん?」


やっぱりこいつ馬鹿だな、と司は苦笑いし小さな声で「空知の好きな子。」

と伝える。


「ふぇ!?」


変な声を出したかと思えば何も言わず電話が切られた。


これはすぐに来るなと司は悟る。


予想通り空知は息を切らしながら教室に入ってきた。


「田中さんがいなくてよかったね。」


司は空知の汗の滲む顔にティッシュを放り投げた。


空知は何も言わずティッシュを出し、汗を拭き取る。


「サンキュー。」


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