嘘と本音と建前と。
司は慌てて帰ろうとする空知を引き止めた。


「いや、すぐ帰ると怪しまれるからもう少しここにいよう。」


空知の頭上にハテナマークが見えた気がした。


空知の耳に田中の怒鳴り声は聞こえているのだろうかと思う。


「田中すごいぞ。廊下の人たち木材切り出したし。」


教室を指さし司に帰ろうと訴えかける。


折角来たのに何もせず帰るのは司にとって無駄としか言いようがない。


それだけは避けたかった。


「藤堂も見ろよ、びっくりだよ。俺感動しちゃたよ、ほ.....」


呆れながらも聞いていた司だから空知が最後まで言い切らなかったことに気付いた。


最後に言いかけたらは空知の口から出ることは無い。


そこにいるであろう田中に指を指し目を見開いた空知は一つも動かない。


「空知?」司の声にすら反応しなかった。


空知の元へ司が行こうとした時、空知の横を一人の女子が通る。


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