嘘と本音と建前と。
司は戻るなり空知を詰めて、友達の後ろに立った。


空知の顔が尋常じゃなく赤い。


それは写真で見てもわかるほどだった。


「その写真、空知のスマホに送ってくれないかな?」


覗き込むようにして友達を見ると何度もコクコクと頷いた。


その友達も顔が赤い。


俺の仕事完了、と司の体に疲労感がどっとくる。


これでパイプはできただろうと司は満足感に浸る。


そして再び司は本を開き読み始めた。


そろそろ香織が主演の劇が開演される頃だ。


写真撮影のあと司が聞いていないところで空知は

ばっちり宣伝されたらしい。


それなのに写真は赤外線で済ましたという馬鹿なおちつきだ。


劇を鑑賞すことにあまり乗り気でなかった空知だったが、

香織と友達に宣伝されたせいで乗り気になったようで司は一緒に

行こうと誘われた。


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