嘘と本音と建前と。
問題のキスシーンも乗り越え司にとって長い四十分間が終了した。


空知は目元を潤ませながら舞台に向けて拍手を送っている。


司はまだ何かが引っかかる。


「凄かったなぁ!」


まだ手を叩きながら空知は司に話しかける。


「ああ。そうだね。」


上の空気味に答えた司に構わず空知は続ける。


「なんかいつも通りっていうか役が普段的な?凄いなぁ!」


空知の一言に司は気付いた。


気付いた瞬間から司の気持ち悪さが増していく。


染谷香織はもしかして俺と同じ人種じゃないか、と。


「空知、店番の時間だからもう行こう。田中さんが怒っちゃうしね。」


返事を待たずして先に立ち上がり体育館を後にする司の後ろを、何か物に

ぶつかりながら空知が追ってくる。
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