嘘と本音と建前と。
空知はその女子を視線だけでなく体ごと追った。


女子は目的の人物を見つけたようで足早とその人の元へと駆け寄った。


立ち止まった女子を空知は今でも見つめている。


空知と女子を交互に見て、司は空知の元へ行った。


「おい」


ようやく空知は司の声を捉えたようで「ほえ?」と間抜けな声をだす。


「あ、藤堂。」


空知が間抜けな顔なのはいつもだが、ただ間抜けなだけでなくネジが抜けたように緩んだ顔だ。


そして微かに頬が赤らんでいる。


「なあ藤堂。一目惚れって信じるか?」


夢でも見ているような浮いた声だった。


そういうことか、と司は悟った。


傍から見れば五メートルほど離れた名前も知らない後輩女子を男二人が目視しているという変な状況だ。


幸い人が多いお蔭で気づかれていない様だ。


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