嘘と本音と建前と。
「そりゃ言ってないもん。僕だって言うつもりだったけど

言い出しづらくて。」


米倉の表情は見えていないが声が震えている。


語尾の方も消えかけるほど小さく弱々しい。


「なんで?前まではそんなことなかったよね。」


やっとの思いで司の元へたどり着く。


砂利の擦れた音で気付かれていたのか司は空知に驚かなかった。


それどころかチラリとも見ず本を捲っている。


「それは...」


いつまで経っても続きを言わない米倉に藤井がしびれを切らした。


「もう...口きかないんだから!」


鼻をすすりながら藤井は走っていってしまった。


ため息をつきガックリと肩を落としているであろう米倉の心象を想像して

これは見ない方が良かったと空知は後悔した。


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