嘘と本音と建前と。
同学年の女友達と図書室に迷惑がかからない程度に楽しそうに話す彼女を直感でしかないがいい子だと司は感じた。


眩しいものを見るように司は目を細める。


「信じてもいいんじゃないか」


ひねくれながらも司は空知の背中を押したのだ。


そのたった一言で頑張れてしまうのが空知なのだから。


「そろそろ田中が迎えにきそうだな、帰るか」


それなりの収穫を獲たので司は満足だった。


司の提案に空知は同意するが、目はしっかりと女子を捉えていた。


ほっておくといつまでも見続け、怒りの標的を司達に変えた田中が本当に来そうだ。


強引に空知の腕を掴み引きずるように図書室の扉を開けた。


司達と入れ替わりにあの女子と同じスリッパの色をした男二人組が入っていく。


「あ、いたいた。染谷。」


真横を通った時に発した言葉だったから聞き取れたものの、それから先は田中の怒鳴り声に全てかき消された。


だから空知も司も染谷があの女子の名前だということに気付くはずもなかった。


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