嘘と本音と建前と。
少し考えてから財布取ってくると米倉が席の方へ行った。


司が着ていたジャージを脱いだ。


それを丁寧に畳んで手に持った。


「藤井さんと仲直りしたってさ。」


空知は目を見開いてからすぐに目を細めた。


「よかった、うん。ほんとによかった。」


米倉が体操服のポケットに財布を突っ込み歩いてきた。


「空知、缶コーヒーよろしく。」


空知の肩をポンポンと軽く叩き、司が笑った。


自動販売機前に空知と司の見覚えがある人がいた。


「あ、ビックサウンド。」


司は呟いてから口元を手で覆ったのを空知は見逃さなかった。


「藤堂、あの人達ってさ。」


空知が見上げると司はその二人を見ていた。


「文化祭前にたむろしてた人達。覚えてたんだ、凄いね。」


自動販売機前が日陰になっている。


司は折りたたんだジャージを広げ、すぐに着た。


「今、思い出した。」


空知は先輩達を見た。


二人の手には缶コーヒーが収まっていた。


「俺ほんと新開地だわ。体育祭で缶コーヒー飲むとか強くね?」


片方の先輩は相変わらずな声の大きさだ。


強いかどうかはさておき体育祭で缶コーヒーを飲む物好きは

司ぐらいだと思っていた。


「いやぁあの子が飲んでるの見るようになってさらにハマったよな。」


缶コーヒーのCMの子のことだろうか。


それとも先輩の同い年に司並の物好きがいるのだろうか。


聞こえてくる会話に耳を傾けるがそれが結局誰なのかわからない。


「廉、買わねぇの?」


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