嘘と本音と建前と。
「ありがとう。」


手を伸ばし司は受取り、軽い音を立ててプルタブを開けた。


「なんだ藤堂おごりかよ。ずりぃ。」


司の背後から顔を出して羨ましがる米倉はパックのジュースを持っていた。


「僕の場合報酬だからずるくない。」


米倉の前髪の隙間に司は中指を勢いよく放った。


「いってぇ。やったな、このやろ。」


ズシッと後ろから司に米倉が飛び乗った。


司はやめろよと言いつつ楽しそうだ。


グラウンドの方からリレーの決勝に出場する人への放送が流れた。


それを三人して静かに聞く。


砂埃(すなぼこり)が舞うグラウンドへは行きたい気分じゃなくなった。


「よし、サボるか。」


米倉が司の上から降りて、提案した。


< 86 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop