嘘と本音と建前と。
動揺を隠すように口元を手で覆う。


司の手はじっとりと冷たくなっていた。


普段はあまり図書室で過ごさない。


理由は特になく留まる必要も無いからだ。


しかし今日は香織に話しかけられたことにより、

しばらくはこのまま図書室に留まざるをえなくなった。


同じ棟の同じ階だといつ会ってもおかしくない。


司は本のページを捲り、そのついでに図書室のドアを見る。


気持ちが悪いと思われては今後に支障が出るのにも関わらず、

香織がもし来たらとばかり考えてしまう。


来たらであって来てしまってではない自分は、

香織に対して何を思っているのかわからない。


司はため息をつき、乱暴に本を閉じた。


そして本を抱き込むように机にうつ伏せになる。


そして司はそのまま目を閉じた。


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