きみに想う 〜赤の民族〜
雫は村の外れの丘に来ていた

大きめの石に座り

月を眺める

この10年

村の外と中を行き来して過ごしていた

さっきまでは

王都の酒屋でウエイターとして

働いていた

王都は情報を仕入れやすいが

タヤル族とバレる、リスクがある

雫は外の世界のほうが好きだった

小さな村の中では、護られているが

小さすぎて居心地が悪いこともある

髪を一房掴み、月にかざすと

バレないようにと染めた

色が抜け

元の真っ赤な色を覗かせている

静かでキレイに輝く夜空を見て

大きな溜息をついた

< 31 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop