きみに想う 〜赤の民族〜
夜温室に雫が向かうと

海斗が花壇の椅子になりそうなところに

既に座って待っていた

雫は何も言わず、静かに隣に座った

「海斗は兄弟いたんだね」

「あぁ、陸と今は離れてるがもう1人妹がいる」

「今わたしがいる屋敷で海斗は育ったんだね」

海斗の幼少期は

愛情を知らなかった、そのことを知る雫は

屋敷が刻んできた記憶が

自分の中に流れてきているということに気づき

心を痛めていた

今の海斗をみると

穏やかで感情もある様子をみて安心し

「今の海斗に会えてよかった」

素直な自分の中の気持ちを

海斗に伝えることが出来て雫は

満足だった

「雫の叔母さんは、どうした?」

「あれからしばらくして亡くなった」

「ごめん」

海斗は雫から顔をそらした

自分のせいで雫は大切な人を亡くした

あの時の悔しさが

海斗の心を締め付ける

雫はそっと海斗の顔に触れる

「海斗のせいじゃない、自分を責めないで」

海斗は自分の手を雫の手に合わせた

微かに雫の手が震えいる
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