きみに想う 〜赤の民族〜
温室に行くと

まだ海斗は来てなかった

花壇にしゃがみ込むようにして座ると

海斗が来た

「待った?」

「ううん、この前はごめん」

なんのこと?と首を傾げる海斗

分からないならいいやとも思ったが

「あたしの知ってる海斗は
今にも壊れそうで、守ってあげたい小さな男の子。でも、今はそうじゃない。立派な1人の男であたし1人のものじゃないって分かったの」


雫の言いたいことが

海斗にはわかるようで、分からない

海斗は雫のためにこれまで頑張ってきた

雫以外はどうでもいいといっても

過言ではないくらい

雫しか必要としてないのに

すっきりとした顔で海斗に

独り占めはしないと宣言する

毎日こうして会い

昔のような話せる間柄になってきた

近づけてきたが

その想いには差があると

海斗は気づいていた

今すぐにでも、雫が好きと言いたい

しかし

雫は自分のことを弟くらいにか想ってない

今気持ちを押し付けたところで

うまくいかないのは分かっていたから

海斗は出した手を戻し

たわいも無い話しをした





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