きみに想う 〜赤の民族〜
いつもの温室に入った

「なんで屋敷に海斗がいたの?」

「陸に用事があったから」

何か歯切れの悪い言い方だったが

雫はそれ以上はつっこまず

海斗の隣に座った

「里菜ね、機嫌が悪いから海斗が来てくれて助かった。貴族の親父に絡まれたから、怒るのは当たり前だけど」

「雫は何もされなかったのか?」

「うん。わたしは大丈夫」

ふと海斗を見ると

じっと見つめる瞳と目があった

逸らしたいのに

反らせない力がその目にあった

次の瞬間

強い力で海斗に引き寄せられ

逞しい体にすっぽりと

包まれるように抱きしめられた

「雫、俺は強くなりたい
強くなってお前を守りたい」

雫は何も言えなかった

そっと離れる海斗の顔は見えなくて

部屋に帰るように海斗から促されて

雫は帰った
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