きみに想う 〜赤の民族〜
普通なら死んでもおかしくないくらいの

魔力を受けた海斗

魔力を持たない海斗が生きているのは

奇跡といっていい

しかし海斗の目は覚めず

1ヶ月が経とうとしている

雫は海斗の側を離れずに看病をしていた

いつものように

雫が手を握り語り掛けると

海斗の手がわずかに動いた

「海斗?」

薄っすらと目を開け天井を見つめている

雫は強く海斗の手を握る

「ここは…?」

掠れた声で雫を見る海斗

「なんで泣いてるの?しずく…」

雫は自分も気づかぬうちに静かに涙を流していた

「よかった…」

泣いてる雫にもっと寄りたい海斗だが

身体がうまいように動かないほど

鉛のように重く感じられた

「昔と同じ…だけど雫がいてくれるから…」

「馬鹿!バカ!なんであんな無茶なことしたの?」

「頭より身体が先に動いたから」

雫はまだ泣いてる

「泣かないでよ、オレは雫の涙をとめる術を知らない」

「ごめん海斗、ごめん」

「なんでそんなに謝る?」

「わたしが海斗の父を殺した」
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