きみに想う 〜赤の民族〜
「きみはこの辺の子?」

雫は頷くと

「ぼくも暫くここにいることになったんだ」

静かにそう言うと

名前は海斗と名乗った

何も話さない雫を何か言うこともなく

2人は別れた

次の日

雫が湖に行くと

海斗が遠くを見つめるようにして

昨日の場所に座っていた

隣にいくと

雫から話しかけた

「どうしてそんな顔をしてるの?」

「えっ?」

「あなたは何も映してない」

昨日は一言も話さなかった雫が

自分から、それも隠している心に

振れてきたことに海斗はびっくりした

「何も映してないかー
ぼくは貴族に生まれたけど魔力がないんだ」

この国の王、貴族は魔力を持って生まれてくる

平民には魔力を持つものはなく

あってもごく僅かなほど稀な存在だ

「魔力がないから家の恥とされ
ついにこの街に捨てられたってこと」

「わたしは貴族が嫌い、自分勝手で思い込みが激しく魔力を持たない者に対して下に見ている」

その通りだと言うように

頷く海斗に

「あなたもその犠牲者の1人なのね」

海斗は雫のその一言に驚いた

同じ年くらいの女の子が

自分と同じ思いを持っていたなんて

「きみは誰?」

「雫…」

「明日もここに来ていい?」

雫が頷くと柔らかく笑った海斗がいた

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