きみに想う 〜赤の民族〜
「兄さん、単純すぎるよ」

そう小さく呟く陸の声は海斗には全くとどくはずもなく

海斗は雫に会い抱きしめた後

宿舎へと帰った

「どうした?そんな顔して、振られたのか?」

人をおちょくるような軽い口調で

桃矢隊長が海斗に話し掛ける

「俺、しばらく休みます!」

「はぁ?何で?」

「タヤル族狩りに備えて、村を探します」

「馬鹿じゃないの?お前!
そんなのタヤル族に直接聞けよ?」

「俺は…言えません」

「なんで?あの子と最近仲良くしてんだろ?」

「隊長は言えますか?
近日中に村が襲われる!その主謀者は今いる屋敷の主人だって!」

海斗はぎゅつと拳を握り悔しそうに顔を歪める

「俺は雫を助けたい、昔は何も出来ずただ見ているだけだった。自分が嫌で訓練を重ねてタヤル族を守れる強さを目標としてきた。だけど陸は弟だ。ただ1人の弟も失いたくはない」

桃矢隊長海斗の肩を叩く

「お前の気持ちは最もだ!
だが陸には陸の考えもあるだろう
それにタヤル族はそんなに弱くない
お前が何かしようとしてもどうにかなるもんじゃ…」

「それでも、俺にはじっとしてられない」

桃矢隊長がいい終わる前に

制しの言葉も聞かずに

海斗は走りだしていた

「いつからあんな行動派になったんだ?」

桃矢はため息しかでなかった
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