恋する僕らのひみつ。



「……忘れるわけねぇだろ」



「……っ……そっか……覚えてたんだ……」



湊も覚えていてくれたんだ。



あの時の夜のこと。



「おかしいよね。いっぱい泣いたのに……どぉして涙止まんないんだろぉ」



湊の背中……涙で濡らしてごめんね。



「我慢すんな、バカ」



湊は向こうを向いたまま、ボソッとつぶやく。



「いつも俺の前では好き放題やってるくせに。こんなときだけ我慢しようとすんじゃねぇーよ」



「……っく……ううっ……」



「しょーがねぇから泣いとけ。気が済むまで」



「……湊……っく……」



「泣き疲れたら、そのうち眠くなんだろ」



そう言って湊は、向こうを向いたままで。



そのままジッと動かずにいてくれた。



ありがと……湊。



あの時と同じだった。



あたしは湊の背中に顔をうずめて泣いた。
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