恋する僕らのひみつ。

「……あ?」



「あたしたちのこと、ヘンに誤解されたらどぉしよぉ」



部屋の向こうで、絶えずお母さんの声が聞こえている。



「結雨ー?どこにいるのー?トイレかしら……」



ヤバいって。



見つかるのも、もう時間の問題だった。



この部屋にあたしが隠れる場所なんてないし。



「おばさんに誤解されて困んのは、おまえじゃなくて俺だ」



布団に寝っ転がったままの湊も、ようやく目を覚ましたのか、この状況をやっと理解した様子。



「おまえ、動くなよ?」



湊の言葉に、あたしは首を傾げる。



すると、湊はあたしの左腕を掴んだ。



「え?」



そして、あたしの腕をグイッと自分のほうに引き寄せる湊。



あたしは体ごと布団の上に倒れ込む。



「ちょっ……」



湊は、あたしの頭の後ろに手を回した。



湊の大きな右手は、あたしの後頭部をガシッと掴み、



そのままあたしの顔は、湊の胸元に強く押しつけられた。



「んぐっ」



――バサッ。



そして、湊はあたしの頭の上まで布団をかぶせる。



「んん~っ」



あたしは布団の中で両足をジタバタさせてもがく。



「動くな、しゃべんな、息止めろ」



ねぇ、息止めたら死んじゃうから。



「おとなしくしとけ」



これであたしを隠したつもり?



見つからない?本当に大丈夫?



湊の胸元に強く押しつけられた顔。



顔が……あたしの顔がぁ……鼻がつぶれちゃう。



痛いし、息が出来なくて苦しい。



でも動いたら、お母さんに見つかっちゃう。



だけど動かなくても、このままじゃ……



悪魔に殺される―――っ!
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