恋する僕らのひみつ。
湊に抱き締められながら、あたしは小さな声で言った。
「先輩……まだこっち見てる?」
「あぁ」
「……ぎゅってして?」
「…………」
「もっと……」
「……ん」
湊はいっそう強くあたしを抱き締めた。
あたしは湊の背中に手を回し、湊の服を掴む。
大好きな匂いがした。
湊の髪の匂いは、あたしの髪と同じ匂いがする。
あたしが匂いでひとめぼれして買ったお気に入りのシャンプーを、湊も使ってるから。
匂いなんて目に見えないものなのに、どうしてこんなにも記憶に残ってしまうんだろう。
先輩の香りも
甘い記憶も
全部、全部……消したい。
湊の腕の中で、あたしはそっと瞳を閉じる。