恋する僕らのひみつ。



時間とともに、



どうしても

少しずつ薄れていく



大切な思い出たち



忘れたくない

幸せな記憶



お父さんの声

お父さんの笑顔

繋いだ大きな手のぬくもり



……消えてほしくないのに、少しずつ消えていく。



時が経つことが

こんなにも寂しくて、悲しいことなんて



知らなかったの……。



湊に抱きしめられて、その大きな手で頭のうしろを撫でてもらうと、少し気持ちが落ち着いてきた。



「あたしは……大切なものを守りたいだけ……」



「ん……」



……大切なもの、消えてほしくない。



守りたいよ。



「湊は……?」



「俺は……残ってねぇから」



「え……?」



「大切なもんなんて、おまえしか残ってねぇから」



湊……。



湊の服があたしの涙で濡れていく。



「もし、いま俺が持ってるもの……他の全部なくなっても……」



湊はぎゅっと強くあたしを抱き締める。



「おまえがいればいい」
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