鬼課長の憂鬱
靴を脱いでその家に上がらせてもらうと、部屋には真新しいソファとテーブルがあった。古めかしい部屋の佇まいとそれらは、少しアンバランスに思えたが、詩織の脚の事を思えば有り難い。
俺達はジャンパーやコートを脱ぎ、座らせてもらおうとしたのだが……
「キャサリン、今誰か来た……」
そんな声と共に、年配の男性が現れた。その人こそ、詩織の父親の省三さんに間違いないと思う。60歳前後と思われ、着古した感じのチェックのシャツを着たその人は、詩織を一目見るなり目を見開き、喋っていた言葉を飲み込んだ。
横の詩織もまた、目を見開き、無言で父親を見つめていた。
しばらく無言で見つめ合う二人だったが、
「おとう……さん?」
先に口を開いたのは詩織の方だった。そして、その詩織の言葉に反応したのは、意外にも父親の省三さんではなく、キャサリンという名前らしい女性の方だった。
「あなたは……詩織ですか?」
俺と詩織は、驚いてキャサリンさんを見た。するとキャサリンさんは、
「あなたは、省三の娘、ですか?」
と詩織に問い、詩織はコクッと頷いた。それを見たキャサリンさんは……
「省三、わたし達を騙したね!」
省三さんに、噛みつくように言い放った。
思わぬ展開に、俺も詩織も唖然とするばかりなのだった……
俺達はジャンパーやコートを脱ぎ、座らせてもらおうとしたのだが……
「キャサリン、今誰か来た……」
そんな声と共に、年配の男性が現れた。その人こそ、詩織の父親の省三さんに間違いないと思う。60歳前後と思われ、着古した感じのチェックのシャツを着たその人は、詩織を一目見るなり目を見開き、喋っていた言葉を飲み込んだ。
横の詩織もまた、目を見開き、無言で父親を見つめていた。
しばらく無言で見つめ合う二人だったが、
「おとう……さん?」
先に口を開いたのは詩織の方だった。そして、その詩織の言葉に反応したのは、意外にも父親の省三さんではなく、キャサリンという名前らしい女性の方だった。
「あなたは……詩織ですか?」
俺と詩織は、驚いてキャサリンさんを見た。するとキャサリンさんは、
「あなたは、省三の娘、ですか?」
と詩織に問い、詩織はコクッと頷いた。それを見たキャサリンさんは……
「省三、わたし達を騙したね!」
省三さんに、噛みつくように言い放った。
思わぬ展開に、俺も詩織も唖然とするばかりなのだった……