鬼課長の憂鬱
 寿司屋を出たところで時計を見ると、社を出てからまだ30分も経っていなかった。という事で、俺は高宮に、


「お茶行くか? 聞きたい事もあるし」


 と言った。

 今朝の泣いた件を聞くつもりはないが、他にも高宮にはいろいろと聞きたい事があった。どれもそう大きな問題ではない、というより小さな問題ばかりな気がするが。

 すると、


「はい。私も課長にお聞きしたい事があります」


 と高宮は言った。


「仕事の話なら勘弁だぞ」

「いいえ、お仕事の事ではありません」

「そうか。じゃあ行こう」


 俺はあくまでも冷静を装ったが、内心は穏やかじゃなかった。高宮が仕事以外で俺に聞きたい事って何なんだろう。個人的に、俺に興味を持ったって事か?

 なんてな。そんなわけないな。


 俺達は近くにあった喫茶店へ入った。俺はコーヒーを飲み、高宮はミルクティーを飲んでいるが、高宮にミルクティーはイメージ的に合ってるなと俺は思った。なんて事はさておき……


「で、俺に聞きたい事とは何だ?」


 そう切り出しだのだが、


「課長からどうぞ」


 と、言われてしまった。俺の聞きたい事なんかより、高宮が俺に聞きたい事の方が何十倍も気になる俺だが、高宮は頑として譲らなかった。癪だが、部長が言った事は正しかったようだ。つまり、高宮は頑固だ。

 仕方ない。時間をとらないように、チャチャッと済まそう。


「高宮。おまえ本当に32なのか?」


 ああ、違う。そんなのはどうでも良かったんだ。高宮が年齢を詐称するわけないんだから。ただ、疑問には思ってたんでつい口が滑っちまった。時間がないのに……


「そうですよ。課長は40歳ですか?」

 …………え?

< 24 / 110 >

この作品をシェア

pagetop