鬼課長の憂鬱
 つい怒鳴っちまったが、俺は今のような受け答えは大嫌いだ。曖昧で優柔不断。こっちはイエスかノーを聞いてるんだ。なぜストレートに答えられない?


「自信はあるのかないのか、どっちなんだ!?」

「あ、あります。たぶん……」

 たぶんってなんだよ。まあ、いいか。


「よし、ではおまえに任せる。今日中に新人のPCを準備しておけ。筆記用具だとかもな」

「はい。あの、高宮さんのIDは……?」

「ID? それがどうした?」

「IDがわからないと、アカウントは作れませんので、教えていただければと……」

「IDは入社当日に発行されるんだ。おまえは、そんな事も知らないのか? 基本だろうが」

「そうでした。どうもすみません」


 こいつ、出来ねえなあ。玉田を教育係にしたのは、失敗だったかもしれない。


「今日のところはアカウントに依存しない基本部分を準備するんだ。ソフトのインストールとかな。そして明日、高宮のIDが発行されたら、アカウントを作ってメールやプリンタの設定をする。IDカードの設定とセキュリティグループに追加するのも忘れるなよ」

「はあ」

「わからなかったら周りの先輩に聞け。わかったか?」

「はい」


「以上だ。全員仕事に戻ってくれ」


 ふう。先が思いやられるぜ。

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